伊達政宗公に学ぶセンスある手紙 ~手書き文字の力

メールが一般的な現代、手書き文字を使用することは効果的な印象を与えます。
大切な人へ想いを送る手紙だからこそ、美しさや、自分らしいセンスを入れたいものです。今回は、偉人に学ぶセンスのある手紙・印象に残る手紙をご紹介していきます。

偉人に学ぶセンスある手紙とは

手紙は、相手に対して情報を伝えるための文章です。手紙は信書や書簡、書状などとも呼ばれています。また最近は絵手紙など、はがきなどに季節のメッセージを添えた手紙も流行しています。

センスある手紙とはどのようなものなのでしょうか。それは、人の心を動かし、時に歴史までも動かす肉筆の手紙のこと。良い手紙には書き手の気持ちがこもっています。ひと言だけのお礼でも、手書きだから伝えられることがあります。

センスある手紙の構成

(花押が入った伊達政宗直筆の書状=栃木県立博物館所蔵)

伊達政宗は遅刻魔で有名でした。伊達政宗が、豊臣秀吉の宇都宮到着に間に合わなかったために、生き残りをかけて、遅刻を詫びる手紙を書きました。その内容は、遅参の状況と徹夜で向かう旨を述べる書状です。

「昼夜兼行で急ぐとも人馬ともに疲弊した上、荷物が到着せず予想外の遅参」
と弁明を書き綴っています。

戦国時代の構成は
・袖(手紙の冒頭)
・本文
・行間
(追伸のようなもの。本文と本文の間に行間を書く。本文・行間・本文・行間)
・花押(かおう)
読む順番は 本文・袖・行間・花押(かおう)となります

花押とは、本人の自署を現す署名のこと。とても美しい筆文字で書かれており、花押の形から、この手紙を書いた年代まで明らかになる重要なアイテムです。
それでは伊達政宗公の手紙をご紹介します。

伊達政宗公のエピソードに学びましょう【花押×伊達政宗】


(文:一般社団法人日本花押協会認定講師:座学講師:磯部深雪)

戦国武将の中でも特に手紙の多さで有名な伊達政宗公。
御本人が筆マメで祐筆(文書の代筆や記録の作成などを行う役目)を使わずご自身で書かれているものが多い上に、「政宗公が書かれたもの」として大事にされてしまうため、公文書もうっかり私的文書も沢山残されています。

彼の逸話の中でも小田原征伐に遅参し、豊臣秀吉から叱責を受けたことが有名です。

大河ドラマ『独眼竜政宗』の中で、政宗公を演じられた渡辺謙さんが秀吉役の勝新太郎さんにしなる杖で首元をビシッと押さえ付けられたシーンは記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

政宗公は若い頃から晩年まで総じてやんちゃなエピソードが多く伝わっていますが、実はこの遅参の後にも重ねて遅刻をした話があります。

それが2015年に宇都宮で発見された『伊達政宗自筆書状(栃木県立博物館蔵)』で状況が如実に判明しました。本来宇都宮城に各武将が集められているのですが、諸事情により到着が遅れます。

天下統一のために召集を掛けた秀吉の呼び出しにも関わらず2度目の遅参…。理由の記載もあり「人馬の疲弊」「荷物の未着」が原因と説明しているのですが、更に「お叱りは覚悟しています!」「昼夜問わず向かいましたが間に合わなくてすみません!」「徹夜で向かいます!」「明日朝10時には着きます!」という政宗が焦って必死な様子も書状で伝えています。生々しいですね。

この年政宗公は24歳。書状に加えられた花押もまだ「政宗」の文字が読み取れ、若々しい墨跡です。

元々手本にしたいと言われて残った手紙も多いほど政宗公の手蹟は美しいのですが、手紙の文字や花押の荒々しさもこの時の状況をよく伝えているのではないかと思われます。

実はこの遅刻の原因には領内の反乱という事情もあったようですが、内情をバラさずにさらりと「荷物が届かないので遅れます」と言い切る豪胆さ。ひょっとしたら文字の荒れ方も演出なのでは…と、いうのは考え過ぎでしょうか。

「花押」というのは「署名と共にあり、時にはその人格さえも現すものである」ため、確かにその方が書かれた(認めた)手紙であるという証拠となります。政宗公の場合、公文書・私的文書それぞれに花押を書き分けており、合わせて20種以上が確認されています。

特に手紙は自筆で書くことをマナーとされていたようで、御子息御息女の皆様にもその旨を強く伝えています。それだけに手紙のやり取りされた時期や加えられた花押の形などから、「どなたにどの様な気持ちでこの手紙を送られたのか」というのが伊達家の皆様の書状からは読み取れて大変興味深いです。

「花押」の話で切っても切り離せないのが、皆様御存知「鶺鴒の目」のエピソード。ちなみにこれも政宗公24歳の時のお話です。こちらについては伝統花押講習の中で裏話も含めてお伝えできればと思います。(文:磯部深雪)

手書き文字の力

いかがでしたか。伊達政宗という偉人からセンスある手紙の書き方を知ることができました。みなさん楽しんでいただけましたでしょうか。手書き文字は、人々の心になにかしらの残響を残します。これも日本人としての本能なのかもしれません。花押を通じて、人々の心にあなたの印象を残すのも一興です。

ご興味のある方はこちらから
http://kaou.or.jp
一般社団法人日本花押協会
文:日本花押協会 常務理事 栗原裕子

★近日開催予定の「伝統花押講習」講座は、以下よりお申込ができます

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