日本の伝統行事に欠かせない「行事食」

ハレの日にはハレの食べ物を食べる。ではその反対は?

日本には、「ハレ」という言葉があります。
ハレの日、晴れ着、晴れ姿、晴れ舞台。

何気なく使ってきた「ハレ」という言葉、皆さんはどのような意味で使っていますか?

ハレの日は「非日常」であり、いつもとは違う特別な日のことを言います。

では、その反対は何かというと、「ケ」と言い、普段の日のことを言います。
昔は、晴れ着の反対で普段着のことを「ケ着」といったそうですが、「ケの日」という言葉が耳慣れないように、「ケ着」も全く使わない言葉となりました。

昔の人はハレの日とケの日を明確に分け、メリハリをつけて生きてきたそうです。
ケの日につつましい生活を送り、粗食だった分、ハレの日には晴れ着を着て、普段食べないような特別な食事をとる。

心身の面からいっても、ケの日は体への負担が軽い食生活を心掛け、ハレの日に心が喜ぶご馳走を食べる。

それが和食であり、日本の食事のスタイルであったそうです。

ハレの日の代表的なご馳走といえば、なんといってもお節料理。
幼ごころにお節料理の中身は正直苦手なものが多かったものの、お重に並べられた色鮮やかな食べ物の数々を見て、心が躍った幼少期を思い出します。

あとは、成人祝い、還暦祝いなど節目節目のお祝い事には頻繁に登場するお赤飯やひなまつりのひなあられ、端午の節句のちまきなど、特別なものとして、行事と行事食が常にセットで記憶されているのもまた面白いものです。

飽食の時代の現代において、ご馳走とは、あるいは特別な食べ物とは何を指すか、家庭によってもだいぶ温度差が生まれていると思います。
また、行事自体が形骸化されゆく中で、行事食という概念もなくなりつつあります。
ただ、幼少期に味覚という五感に刷り込まれた記憶というのは、一生もの。

日々の生活にメリハリをつける意味でも、子どもに幼少期の記憶として残してあげる意味でも、今一度昔ながらの行事食に目を向けてもよいかもしれません。

そこで今回は一年の中で行われる伝統行事の中で欠かせない存在の行事食とその意味を見ていきたいと思います。

ハレの日に欠かせないの祝い食、「お赤飯」

お赤飯は祝い事には数多く登場する代表的な行事食です。
お祝いの席になぜお赤飯を食べるのかというと、お赤飯の「赤色」にその意味があります。

赤は邪気を払い魔除けになるという意味が込められており、そこから祝い事に欠かせない食べ物となったようです。

また江戸時代に白米が流行したことで増えた疾患である「江戸患い」というビタミン不足による脚気症状を予防するためにも頻繁に赤飯が食べられたという話もあり、生活の中で、赤飯が登場する機会が実はかなり多くあります。

月単位でみてみると、お赤飯の登場する主な行事は、以下の通り。

1月 元旦、成人の日
2月 節分
3月 ひなまつり、お彼岸
5月 子どもの日
8月 お盆
9月 敬老の日、お彼岸
11月 七五三
12月 大晦日

更に、その人それぞれで発生するお祝い事の場でのお赤飯の登場する主な行事は、以下の通り。

帯祝い
出産
お食い初め
誕生日
入学・卒業
成人・就職
還暦
古希
喜寿
米寿
白寿

それ以外にも、毎月1日にお赤飯を食べるという風習もあります。
地域によっても異なりますが、「お朔日(おついたち)」といって毎月1日に新しい月が始まる際に月の初めを祝い感謝するとともに特別な意味を込めてお赤飯を食べるようです。

食育にもなる「行事食」

行事食とは、季節の旬の食べ物を取り入れたものが多く、身土不二(しんどふじ)といった考え方もあるように、その土地のもので、その時にとれた旬の食べ物を食べることで、自然と調和し健康を願うといった意味が込められています。

いつでもなんでも食べられる時代だからこそ、旬な食べ物が何で、一番栄養がある時期がいつかということを子供に教えるよい機会になるかもしれません。

1月の主な行事と行事食

  • 正月(1月1日~7日):おせち料理・雑煮
    雑煮は正月三カ日の食べ物とされていますが、本来は歳神様に供えた餅や食べ物を元旦に分配して食べていたとされています。
  • 人日の節句(1月7日):七草
    五節句の一つ。お正月最後の日に、旬の七草を食べて無病息災を願うとされています。
  • 小正月(1月15日)、二十日正月(1月20日):小豆粥
    小豆の朱色には邪気を祓う力があると言われており、小豆粥を食べることで一年の無病息災を願います。

2月の主な行事と行事食

  • 節分(2月3日):福豆・恵方巻・鰯
    鰯は柊の枝に鰯の頭を指したものを門口に置き、邪鬼を避けるまじないです。
  • 初午(2月最初の午の日):いなり寿司
    二月最初の午の日に行われる稲荷神社の祭りにて、稲荷神社の神の使いである狐の好物である油揚げを使った料理であるいなり寿司を食べるそうです。

3月の主な行事と行事食

  • 桃の節句(3月3日):ちらし寿司・蛤のお吸い物・菱餅・ひなあられ・白酒
    五節句の一つ。蛤は、蛤の貝殻がぴったりと対になっていることから、仲の良い夫婦を表し、一生一人の人と添い遂げるようにという願いが込められています。
  • 十六団子(3月16日):16個の団子
    山と里を行き来する「農業の神様」をお迎えするために16個のお団子を供えて神様をもてなす習慣です。
  • 春分(3月20日前後):ぼた餅
    ぼた餅に使われる小豆の朱色には邪気を祓うと言われており、先祖供養と結びついてお供えされるようになったようです。

4月の主な行事と行事食

  • 花祭り(4月8日):甘茶
    お釈迦様の誕生日である4月8日に、誕生の際の故事に由来する
    甘茶をかけるお祝いです。

5月の主な行事と行事食

  • 端午の節句(5月5日):柏餅・ちまき
    五節句の一つ。柏餅は日本独特のもので、柏は神聖な木であり、新芽がでないと古い葉が落ちないことから由来し、子孫繁栄に結びつき縁起の良い食べ物となったようです。

6月の主な行事と行事食

  • 夏越の祓(6月30日ごろ):水無月
    半年分のケガレを落とす行事で、この後の半年の健康と厄除けを祈願し、日本各地の神社で行われる行事。冷蔵庫も冷房もない時代、暑い季節に体力を消耗するので、甘いお菓子でエネルギーを補給し厄払いをしていたようです。

7月の主な行事と行事食

  • 七夕(7月7日):そうめん
    五節句の一つ。七夕はもともとは中国の星祭。そうめんも同様に中国の故事に「7月7日に索餅(そうめんの原型とされる麺料理)を供えると1年無病息災に過ごせる」という言い伝えがあり、そこから伝わったと言われています。
  • 土用の丑(7月20日~8月6日頃):うなぎ・「う」のつく食べ物
    季節の変わり目を土用(立春・立夏・立秋・立冬より前の約18日間)と呼び、丑の日に「う」のつくものを食べると縁起がよいとされる言い伝えがあります。うなぎは旬ではありませんが、江戸時代に夏にうなぎが売れないうなぎ屋が「土用の丑の日」としてうなぎを売ったことでうなぎを食べることが定着したとされるエピソードがあります。

8月の主な行事と行事食

  • お盆(8月15日):そうめん・精進料理・団子・きゅうりとなす
    そうめんは、先祖へのお供え物として、「ご先祖様があの世に帰るとき、荷物をくくるための綱になる」「幸福が細く長く続くように」など、そうめんの見た目から連想する意味が込められています。

9月の主な行事と行事食

  • 重陽の節句(9月9日):菊酒・菊のお菓子、栗ごはん、秋茄子
    五節句の一つ。古来より、奇数は縁起の良い数ととらえ、奇数が重なる日にお祝いとともに厄払いを行った日。
    菊は薬草にもなることから寿命を延ばす象徴とされ、旧暦の9月9日は菊の美しい季節でもあったことから、菊を用いた料理がとりいれられたようです。
  • 十五夜(9月中旬~10月中旬あたりの満月):月見団子
    十五夜は満月をさす言葉。
    月の神様に五穀豊穣の感謝を込めて収穫したお米で作ったお団子を供えるようになったようです。このお団子を食べることで神様の結びつきが強くなると考えられていました。
  • 秋分(9月23日頃):おはぎ
    おはぎに使われる小豆の朱色には邪気を祓うと言われており、先祖供養と結びついてお供えされるようになったようです。

10月主な行事と行事食

  • 十三夜(10月中旬~下旬):月見団子・栗ご飯・豆
    十五夜に次いで美しい月が出る夜とされ、十五夜だけを鑑賞することを「片見月」と呼び縁起が良くないとしたことから、十五夜にお月見をしたら十三夜にもお月見をするものとされていました。秋の収穫のお祝いでもあるため、秋にとれる大豆や栗などを中心にお供えされています。

11月の主な行事と行事食

  • 神迎えの朔日(11月1日):赤飯
    もともと朔日(ついたち)にはお赤飯を食べるおついたちという行事がありますが、この日は10月に出雲に出かけていた神様が神社に帰ってくる日とされ、お赤飯と一緒にお神酒をお供えし神様をお迎えするという意味があります。
  • 亥の子(11月最初の亥の日):亥の子餅
    古代中国から伝わったといわれ、「亥の月、亥の日、亥の刻に穀物を混ぜ込んだ餅を食べると病気にならない」とされ無病息災を願う行事とされています。地域によって、祝い方や内容が異なる行事です。
  • 七五三(11月15日):千歳飴
    千歳飴は長く、縁起の良い紅白の飴であり、親が子供に長寿の願いをかけているとされています。

12月の主な行事と行事食

  • 乙子の朔日(12月1日):小豆餅
    水神を祀る行事。川浸りの朔日ともいう。
    餅をついて食べと水難に遭わないと言われています。
  • 冬至(12月22日頃):かぼちゃ・「ん」のつくもの
    一年の中で最も昼が短く夜が長い日に、縁起担ぎや栄養をつけて寒い冬を乗り切るという意味があります。
  • 大晦日(12月31日):年越しそば
    月の最終日を晦日と呼ぶようになり、そこに1年の最後である12月の最終日を大晦日と呼ぶようになったようです。
    そばは、切れやすいことから、「一年の災厄を断ち切る」という意味が込められているようです。

まとめ

いかがでしたか?

意外と知られていない行事や、行事食の意味があったのではないでしょうか?
上記以外にも、まだまだたくさんの行事や行事食があります。また、上に記載した行事であっても地域によっては、日にちも内容も異なる行事や行事食になっているものもあります。

いずれにせよ、昔から人は月に数回、ケの日(普段の日)とは違う行事を取り入れ、自然や神様に感謝し、自分たちの健康や幸せを願ったようです。

忙しい現代人こそ、こういった行事や行事食を日々の生活に取り入れることで、ふと足を止めて、日々の生活に感謝し、健康に生きることの素晴らしさを実感できるのかもしれません。

季節を感じ、五感に残る行事食をいただく。
ぜひ、家族や友人と一緒に楽しんでみていただきたい日本の美しい伝統文化です。

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