花押から見る日本人のアレンジメント能力の高さ

優れたリーダーは新しい価値を創り出します。そして、どの時代でもその様な優れたリーダーは、新しい価値を生み出す時に多くの今迄の情報から独特の理論で「別の本物」を創り出す「アレンジメント能力」を持っています。

古くから私たちは、様々な海外文化を日本独自にアレンジメントしてきました。さらには世界に通用するまで進化させたものを生み出しています。文字で言えば、いま私たちが日常使っている「ひらがな」や「カタカナ」も、元は漢字をアレンジメントして生まれた文字文化です。

近代では世界的にジャパニーズカルチャーと言えるまでになったアニメ文化やゲーム文化もそうです。また、洋式トイレなどもシャワートイレにアレンジメントして世界中に広まっています。

そのようなものの中に日本の署名文化の「花押(かおう)」があります。
日本人が世界でも類を見ないほどアレンジメントした署名文化であり、世界に誇れる文化のひとつです。

今日はそんな「花押(かおう)」の文化をどんな風に私たちのご先祖がアレンジメントしてきたのか、その魅力をご紹介させていただきます。

花押やひらがなが発生するきっかけになった平安時代

ところでみなさんは「花押(かおう)」をどれぐらいご存知でしょうか?
花押とは1000年以上も前からある署名のことです。茶の道具に書かれていることが多く、お茶を習っている方の間では家元の署名=「花押(かおう)」が入っているとその道具の価値が数倍になるという話は有名です。

奈良時代は中国との外交が盛んだったことから、中国の文化を独自に取り入れていましたが、平安時代になると外国との交流をやめてしまい、取り入れた文化を日本独自にアレンジメントするようになります。

こうして平安時代に生まれたのが、今皆さんが使っている仮名文字であり、竹取物語や源氏物語などの名文学作品です。この頃に日本のアレンジメント能力は磨かれたのかもしれません。この頃の日本は最も日本独自の文化が栄え、武家が力を持ち始めた時代になります。

花押はいつ流行したのでしょうか?

「花押(かおう)」は平安時代から江戸時代に流行し、富裕層のあいだではステータスを誇りました。僧侶や茶道などの文化人の間で使われ、最近は坂本龍馬の手紙や映画シンゴジラなどでも見かけるようになりました。

花押は日本独自の文化の発展とともに広がっていきます。署名の役割のほかに、花押の中にセンスを示しながら、かつ個性を発揮できるアイテムの一つだったことがうかがえます。

ここでは空海の花押からアレンジメントの仕方を見ていきたいと思います。

「花押」はどんなふうにアレンジメントされるのか

花押は平安時代に中国から日本に入ってきました。中国での花押は簡単な記号を組み合わせたものが多くみられます。明朝体と言われる江戸時代に流行った花押は中国の明代に流行したものを元にしており、明朝体と言われる花押の書体になりました。上下の線の間に記号を入れるような図形をしています。

日本に入ったばかりの花押は、自分の名前を草書体で書いたものをひとつの図形のようにしたものでした。これを花押の書体で「草名体(そうみょうたい)」と言います。苗字ではなく名前の草書をさらに崩して、偏やつくりを左右や上下に並べ替えたり一部だけをデフォルメしたりとアレンジメントして作ります。

空海の花押を例に見てみましょう。

※上記左が空海、右が竹中半兵衛の花押

空海の「花押(かおう)」の構成は空海の「海」の字を二つにわけて、「空」「毎」「水」を縦に組み合わせた形になっています。
「海」のサンズイを「水」にして一番下へ持っていき、上から「空」「毎」「水」と一文字にした偏とつくりをアレンジメントするパズルのような感覚が興味深いです。

その後、日本の歴史によって花押の作り方はどんどんユニークにアレンジメントされます。戦国時代においてはついに武将たちは名前ではなく、自分の志や願いから花押をつくるようになります。

例えば竹中半兵衛の花押は「千年」「おほとり」という文字を崩したものです。当時鳳(おおとり)が千年に一度現れ平和をもたらす空想上の動物とされていたことから、花押に平和の想いを繁栄し、自らが戦いを終わらせ天下を平定しようという竹中半兵の想いを感じることが出来ます。

花押を作るなら自分の志や願を一文字に込めるのもいいかもしれません。

日本人はアレンジメント能力が高い

2017年1月に伝統的な三味線のDNAを受け継ぎアレンジした創作和楽器「SHAMIKO」(株式会社セベル・ピコ)と花押がコラボレーションをした展覧会が開催されました。「日本の文化を伝える三味線」をアレンジし、もっと手軽に和楽器に親しんでもらいたいと「SHAMIKO」は生まれたそうです。こうした現代の新しい和文化を見ても日本人のアレンジメント能力の高さが良くわかります。

能力のある人は最終的に、本物のように仕上げて、オリジナルより優れたものを生み出します。

「自分の志や願を自分の署名にする。」

そのような文化は世界をみても非常に希少です。このような自由でクリエイティブな発想をしたのは日本の武将たちであり、これは現代を戦い抜くビジネスマンにも通じる心ではないでしょうか。そう思うと花押にはロマンだけでなく未来を感じます。

自分の花押をアレンジメントしたい方は、日本花押協会の「伝統花押講習」を受講することで作ることができます。

花押を通じ自分の良いところはどこか、自分の本質やエッセンスは何なのかを感じるのもよいかもしれません。

ご興味のある方はこちらから
http://kaou.or.jp
一般社団法人日本花押協会

文:日本花押協会 常務理事 栗原裕子

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