印鑑レスの時代目前?ニッポンもいよいよ署名文化へ

日本もいよいよ署名文化へ?

日常でよく目にする印鑑は、日本の習慣に深く根づいています。海外の方がビジネスで日本に滞在する際、真っ先に必要になるのが印鑑という話をよく耳にします。

日本は、印鑑に代わってサインの形状や筆圧を電子的に登録する「電子サイン認証」を一部に導入する流れになってきました。

指静脈情報を登録すれば口座を開設できる生体認証取引で諸手続きができるようになり、また別のところでは、届出印なしでインターネットバンキングサービスなどを申し込むことで口座が開設できるなど、印鑑レスの流れはすでに始まってきています。

印鑑レスの流れから、今、自分だけの署名花押(かおう)を持つことに注目があつまっています。近年の戦国武将ブームから家紋が広く知られるようになり、このごろの雑誌では花押が紹介されはじめています。家紋=家というマスから花押=個という今の時代の現れでしょう。

花押(かおう)は個人を現す自署の署名です。
1000年以上続く華やかな署名文化が知られなくなり、なぜ日本では印鑑が普及したのでしょうか?
その理由を見ていきましょう。

1000年続く署名文化の花押(かおう)から印鑑文化になった理由は?

印鑑が広まったのは今から150年ほど前になります。明治に入り太政官布告(だじょうかんふこく)という実印なき証書は裁判上の証拠にならないという発令により、1000年以上も署名として愛されてきた花押は使われなくなり、印鑑が広がっていきました。

印鑑が広がる前の花押の文化を見ていきましょう。
花押は平安時代から主に時の権力者の間で広がり、戦国時代には戦国武将の間で華やかで個性豊かな花押がつくられました。花押の使われ方は印鑑と似ていて土地をもらうときや、戦に遅れずに参加しましたというときに花押を署名して土地やお金を受け取っていました。

江戸時代になり初めて庶民が土地を与えられた際にも花押の署名が必要になりました。ですが本来文字をもたず、自分の名前が書けない農民や町人が、花押を書くことはとても難しく、役人の思惑もあり、誰でも簡単に押せる印章が普及していきます。その後は武士までも公文書に印章を使い始めたことで、花押はあまりみかけなくなりました。

またもう一つの理由に、花押をもつ人たちの花押のステータスを保ちたいという想いがありました。庶民も花押を持てるようになりますが、エリートたちは面白くありません。庶民とエリートの花押を差別化するために、陰陽道の人や密教の僧侶の中から花押作る専門家と名乗る人が現れます。

花押の作り方を陰陽五行説(おんみょうごぎょうせつ)などに照らし難しい花押を創り出し差別化し、さらにその作り方を門外不出としたことで、花押の需要は一気に縮小したと考えられています。現在でも内閣総理大臣や官僚など一部の方のみが花押を使用しています。

日本の署名文化の行方

今後の日本の署名文化はどのようになっていくのでしょうか。
世界的に見ると・パスポートやクレジットカードの署名、契約書、企業での稟議書、官公庁の決裁でサインが使われています。このすべてに花押を活用することが出来ます。日本でも世界と同じように花押の活躍する場面があるかも知れません。

歴史的に見て花押はどんな場面で使われていたのでしょうか?歴史ドラマに花押が登場するシーンを振り返ってみます。

大名から書状が届き、殿様が書状を開くと、文の最後に書いた人の直筆の花押があります。この意味は「この文章は間違いなく私が書きました」(花押を加えた者が書いてなくて「書いてある内容を認めた」という場合もあります)と本人の書であることを証明するために、花押を署名しています。

これは現代にも通じていて
・クレジットカードの署名
・パスポートの署名
・企画の稟議書
・官公庁の決済
などに花押を使って署名することができます。

遺言書に花押を用いることができるでしょうか。2016年6月3日の判例を見かけることが出来ました。

最高裁によりますと、花押は民法968条の1項の「印」の要綱を満たしていなようです。

「重要な文書は署名し、押印することで完結させる慣行がわが国にはある」と説明。その上で「花押を書く慣行はなく、印章による押印と同視することはできない」

最高裁の判例ですが、日本において花押の慣習が広まれば、遺言書の取り扱いが変わることもあるかも知れません。

契約書や念書などの文章をつくるときに、作成する人が普段から重要な書面には花押を添えていたら、その文章は本人の意思によりつくられたという何よりの証拠になります。また認印よりも花押の入った書面ほうが、はるかに「本人の意思」が強く反映されていることになります。

印鑑レスが加速する流れの中、今後ますます花押を作る人は増えていくことでしょう。

花押でクレジットカードの署名をカッコよく

いかがでしたか?日本の署名文化の流れから未来の署名が想像できましたでしょうか?
花押は自分だけのお洒落な署名で、セキュリティーも非常に高いものとなります。

あなたもクレジットカードやパスポートの署名をする時の新しい楽しみを見つけてみて下さい。

ご興味のある方はこちらから
http://kaou.or.jp/
一般社団法人日本花押協会

文:日本花押協会 常務理事 栗原裕子

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