【開催レポート】人事担当者と僧侶が共に考える「働く」とは何か? 2017年10月19日(木)開催

人事担当者と僧侶が共に考える「働く」とは何か?
-「働き方改革」の本質をブッダの教えをもとに学ぶ-

「端楽(はたらく)」の著者であり、浄土真宗本願寺派僧侶でもある傍ら、一般企業に勤め通訳や翻訳も手掛けている、大來尚順さんをお迎えし、企業のご担当者様向けにセミナーを、(株)シェイクと和の大学の共催というカタチで、先日開催させていただきました。

昨今、「働き方改革」といったキーワードを目にしない日はない程、新聞やメディアを賑わせています。労働時間の見直しやテレワークの導入、副業、兼業を認める企業も増え、時代や価値観が大きく変わる中、我々日本人にとって「働く」とは、改めてどんな意味や意義があるのでしょうか。

企業で働くサラリーマンの顔も持つ大來さんは、「サラリーマンはつらい」と語り、働く上で直面する人間関係のお悩みや、働く上で心掛けたいことを、仏教の教えをもとにお話いただきました。

そもそも「苦」と何なのか?

私たちが働く上で、誰もが必ず直面する「苦」とは、一体何なのでしょうか?
大來さんは、「苦」とは、不満足からくる、不満足の心が苦しみを増大させていくとおっしゃっていました。

また、その「苦」とどのように付き合っていけばよいのか?の質問に対し、
苦しい原因を把握することが大事、何で苦しいのか?自分の想い通りにならないから苦しい。また、苦は生きていく上で避けることはできないもので、苦と付き合っていくためには、心の訓練が必要であるとのことです。

「少欲知欲」
欲を少なく足るを知る。自分の内側に目を向け、自分が恵まれていることに気づくこと。今ある立場で幸せを見つけていくことが大事であるとおっしゃっていました。

マインドフルネスは、何のためにやるのか?

仏教には、お釈迦様の根本的な教えを実践する「八正道」という8つの方法があります。人間が正しい生き方をする八つの道(方法)という意味ですね。

「八正道(はっしょうどう)」
(1)正見(しょうけん) →正しいものの見方
(2)正思惟(しょうしゆい) →正しい思考
(3)正語(しょうご) →いつわりのない言葉
(4)正業(しょうごう) →正しい行い
(5)正命(しょうみょう) →正しい生活
(6)正精進(しょうしょうじん) →正しい努力
(7)正念(しょうねん) →正しい心構え
(8)正定(しょうじょう) →清らかな境地

8つ目の「正念」がマインドフルネスに当たるとのこと。マインドフルネスは、ベトナムのティク・ナット・ハンが作った言葉で造語。色メガネを外すという意味合いもある。マインドフルネスは、目的ではなくあくまで過程であり、心が整った境地に至りついたあと、どうするかが大事である。

八正道の正しさの定義は、「偏らないこと」「ありのまま」でということ。英語で表すなら、right view true viewと言い換えられます。

「心身一如(しんしんいちにょ)」
心と身体はひとつであるという考え。荒れた心で行動すれば、物事は荒れるし、他人にも伝染する。心を整えた状態で、行動することが大事。

端楽(はたらく)について

端(はた)を楽(らく)にすること。自分の周りの人やお世話になっている人を楽にする、つまり、幸せにすることを言い表しています。

「抜苦与楽(ばっくよらく)」
抜苦とは、苦を抜く「悲」をあらわし、与楽とは、楽を与える、「慈」をあらわし、人々の苦しみを取り去り、安楽を与えることを言い表す仏教用語です。

大來さんは、「慈悲」の実践とは、こういうことだというのを見かけたことがあるそうです。

通勤途中に、大きい横断歩道があり、角にいつもおじいさんが立っていた。
近くに小学校があり、車の通りも多い場所です。
ある日、そのおじいさんに話しかけてみました。
「何していらっしゃるんですか?」
すると、おじいさんは、
「この辺は車が多いし、子供も多いので、事故がないように見張っているんだよ」
とおっしゃいました。

何か見返りを求めるのではく、自分のできることをただやっている。
こういうことが、まさに「慈悲」の実践だなと思っています。

また、大來さんにとって働く目的は何ですか?の質問に対し、「恩返し」とおっしゃっていたことがとても印象的でした。

大來さんは、小中高は、やんちゃな性格で親に迷惑かけてきたとのことです。また、ご自身も悩んで苦しい時期があり、その時仏教に救われた経験があるとのこと。苦しい人がいれば、少しでも役に立ちたい、自分が大事だと思ったことを、多くの人に共有したいとの想いから、現在のようなスタイルで様々な活動をされているとのことでした。

気の合わない同僚や上司がいたらどうすれば良いか?

セミナーの後半は、質疑応答で参加者の方からあげていただいた質問に答に答えるカタチで進行しました。様々な質問があがった中で、いくつか抜粋してお伝えさせていただきます。

Q:不要な考えを手放すにはどうすればよいのか?
A:集中するのがいい。夢中になれるものを見つけてやる。
集中は、サンスクリッド語でsamadh(サマディ)と言い、三昧とも訳されます。
集中することで、最終的には、不要なものがなくなる。そして、自分に必要なものが残る。

Q:病院で鬱と診断された方は、仏教で楽になりますか?
A:本人次第です。様々な考え方があるため、人によって合う合わないがある。仏教ではなくキリスト教が合っている人もいるでしょう。これまで、何人もの方をカウセリングしてきましたが、自分で乗り越えられた方がほとんどです。仏教の教えは、何かの役に立つことはもちろんありますが、断言はできない。

Q:気の合わない同僚や上司がいたらどうすればいいか?
A:割り切るしかない。私も以前上司が嫌で転職したことがありましたが、違う会社に行っても、また同じように嫌だなと思う人がいました(笑)
「怨憎会苦(おんぞうえく)」
四苦八苦の一つでで、嫌な人でも必ず会わなければならない苦しみを表す言葉です。仕事とプライベートと、オンオフをつけて割り切って付き合うことが大事。また、嫌なことをする人がいたら、反面教師にして自分が人に同じようなことをしないようにすることです。

Q:欧米型のリーダーシップと、今の日本のリーダーシップの違いは? 仏教視点で教えてください。
A:どれだけ自分の国を知っているかどうかだと思う。
普段、当たり前に使っている日本語の本当の意味を知らないし、外国人に説明ができないという経験を私自身もしている。

例えば、「おかげさまで」の意味をみなさんはご存知ですか?
「おかげさま」は漢字で書くと「御蔭様」と書きます。御蔭とは、神仏の加護によるという意味。神仏に助けられ、生かされているという意味があるのです。

Q:「欲」がなくなると、心が穏やかになり楽になれるのですか?欲がないとモチベーションがわかないのですが。
A:欲はあってもいい。欲を持つことは、悪いことではない。ただ、他人を傷つけたり、人を蹴落としてまでという欲はよくない。また、「欲」と「煩悩」は違う。

煩悩には「三毒」と呼ばれるものがあります。
貪(とん)・瞋(じん)・癡(ち)です。

とん:貪欲(とんよく)ともいう。むさぼり(必要以上に)求める心。
じん:瞋恚(しんに)ともいう。怒りの心。
ち:愚癡(ぐち)ともいう。真理に対する無知の心。

また、人である以上死ぬまで「煩悩」はなくならない。だから、転換していくことが必要。消すのではなく、把握した上でどのように転がすか。自分のためだけでなく他人のために転がし使うことが大事である。

最後に

長くなりましたが、まだまだここには書ききれない貴重なお話を沢山お伺いすることができました。最後に大來さんは、仕事は、いろんな人の支えがある中で、自分がさせていただいていること。私という人間もまた不特定多数の人に影響を与えている。支えていただいているのだから、返さないといけないとおっしゃっていました。

我々は、何のために働くのか?「働く」ことの本質を、改めて考え直す貴重な機会となりました。また、仏教とビジネスは、かけ離れたものではなく、職場で役に立つ教えや、ヒントをたくさん学ぶことができました。

今回、お話いただいた大來尚順さんの著書「端楽」は、以下よりお求め頂くこともできますので、ご興味ある方は、ぜひご覧ください。


「端楽」(著者名)大來尚順 発行:アルファポリス

大來尚順オフィシャルサイト
http://shojun-ogi.com/

作成者:和の大学 事務局 伊藤律子

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