【開催レポート】第4回:奈良薬師寺・松久保師に直接教えを乞う「仏教」とは何か?

仏教ゼミ第4回 2018年1月17日(水)開催

昨年から連続で開催している仏教ゼミも、第4回目を迎えいよいよ後半にさしかかりました。2018年も始まったばかりのこの時期に、今回も貴重なお話をたくさんお伺いすることができました。

松久保師がいらっしゃる奈良薬師寺は、年末年始は数多くの行事があります。中でも日本最古の彩色画として国宝でもある「吉祥天(きちじょうてん)」をお祀りし、吉祥悔過(きちじょうけか)と呼ばれる法要を毎年1月1日~3日で行っているそうです。悔過(けか)とは、仏教用語で罪や過ちを悔い改めることを言います。

一般的に初詣では、新年の祈願として、家内安全や商売繁盛などのお願い事をします。しかし、悔過とは、まず、自分がやれていなこと、できていないことを整理し、お詫びすることから始まるとのことです。願ったことに対し、努力してない自分を反省したりするそうです。

例えば、仏様が親としたら、どんな子供がかわいいのかという視点で考えてみるとわかりやすいです。あれして欲しい、これもお願いと、自分の要求ばかりする子供より、あれもこれも自分はまだできていないと、正直に言われたら、ちょっと背中を押してあげたくなるのではないでしょうか。このような法要を「悔過」と呼び、何千年も続いているそうです。

また、「吉祥天」は美と幸福の女神と言われており、年間で60日しかお出ましにならないそうです。ご興味ございます方は、来年にはなりますが、ぜひ薬師寺まで足を運んでみてください。


●奈良薬師寺
http://www.nara-yakushiji.com/index.html

人の「免疫」を支配するもの ~生命の不思議その1~

松久保師は、NHKで放送されたシリーズ人体の「免疫」をご覧になり、とても興味深かったとお話します。

人間の腸には、3万種類と言われる腸内細菌があり、善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分けられるそうです。そして、その割合が、善玉菌:20%、悪玉菌:10%、日和見菌:70%。日和見菌は、健康な時は問題ないが、身体が弱っていたりすると悪玉菌の味方をし、人体に影響を与えるそうです。

人は、喉や鼻で風邪をひいてるような感覚になるが、実は腸内菌のバランスが鍵を握っている。人間の身体の最前線は、“腸”にある。腸が人の「免疫」を牛耳っている。そのため、私たちの身体は、腸内細菌の絶妙なバランスに左右されるとのことです。最近、よく耳にするアレルギーや免疫不全なども、腸内のバランスが崩れたために起こることがわかっています。しかし、なぜバランスが崩れてしまうのか、その原因は明確になっていないそうです。

この番組をみて、松久保師は「実際」という言葉が頭に浮かんだそうです。「実際」とは、仏教の言葉で、元はインドから伝来したブータ・コーティの訳語。ブータは「ものごと」「起こったこと」、コーティは「境界」「きわ」を意味します。免疫の話でいくと、「境界」は腸の壁に当たる。壁の内側では、免疫を牛耳る腸内細菌が生きている。

腸内細菌と免疫細胞の重さは、約1.5kgから2kgもあるそうです。松久保師は、この腸内細菌と免疫細胞は、自分のものではなく、他の命とおっしゃっていました。私たちの命の支えともなってくれているのが、腸内細菌と免疫細胞である。これらのお蔭で、健康が保たれ生かされていると。

自分の身体であっても、他の命によって生かされている。人の身体には不思議なこと多いですね。

「阿頼耶識」にある種子(しゅうじ)とは? ~生命の不思議その2~

お釈迦様が、人間の心理を大きく8つに分けて説いた「八識(はっしき)」という教えがあります。

1. 眼識(げんしき)
2. 耳識(にしき)
3. 鼻識(びしき)
4. 舌識(ぜっしき)
5. 身識(しんしき)
6. 意識(いしき)
7. 末那識(まなしき)
8. 阿頼耶識(あらやしき)

7つ目以降は潜在意識とも言われ、「末那識」は、自我意識、簡単に言うと人間の欲です。しかし、欲は悪いことばかりではなく、末那識がなければ、みなさんここへ来ていない。何か学びたいという欲もその一つ。また、「阿頼耶識」は蔵、箱のようなもの。末那識を通して入ってきたものが、阿頼耶識に落ちる。阿頼耶識は、深層心理などとも言われており、西洋の心理学者もこれを勉強したいと言う方が多く、関心が高い。

阿頼耶識には、「種子(しゅうじ)」とも呼ばれるものが入っている。いい種、悪い種、とんでもない種もあるかもしれない。新薫種子(しんくんしゅうじ)と呼ばれるものは、新しく薫じられたもの。先天的に元々あったものは本有種子(ほんぬしゅうじ)と言われる。

本有種子は、例えば赤ちゃんはお腹すくと泣きますよね。そしておっぱいを飲む。誰も教えていないのに、そうすることができる。また、渡り鳥は、必ずV字飛行をする。先頭の鳥は負担がかかるが、他の鳥達はあまり負担なく飛べる。体力の消耗を抑えながら、集団で飛べる方法。これも、教えられていないけどできる。

さらに、「啐啄の妙(そったくのみょう)」と言われ、雛鳥が生まれる時に、中から殻を叩き、親鳥がそれに応じて殻を破る。叩く方も、叩かれる方も、お互い絶妙なタイミングを知っているから「妙」と言われる。これも誰に教えられた訳でもなく、元々どこかにあった。動物学的に、元々持っている何かが確かに存在する。これを本有と言う。そして、それがある場所が阿頼耶識で、持ってる状態を種子と言います。

一般的に本能と言われたりしますが、生命の営みは理屈じゃない不思議なことがたくさんあるなと感じます。自分の意志がなくとも心臓が動いていたり、腸内の絶妙なバランスが保たれていたり、一体誰がこんな風に作ったのかと、奇跡のような不思議な感覚に陥りました。

「般若心経」に込められたお釈迦様の想い

毎回冒頭で、参加者全員で読経している「般若心経」。最も有名なお経として知られる般若心経は、266文字と短いお経です。その中で「無」という字が21字と最も多く出てきます。

これは、一体何を意味しているのでしょうか。

お釈迦様は、般若心経の中で、自身が説いた「四諦」の教えや「五蘊」「苦集滅道」の教えも、そして智恵や得さえも、般若心経の中では「無」と表し消していきます。

なぜなら、お釈迦様は仏教で言われる「無分別」の境地を目指していたから。
仏教で言う「無分別」とは、思慮が浅いという意味ではなく、分別を超えて、物事を比較せず、あるがままを見るということです。教えがあることで、人は分別ができ物事を明らかにできる一方で、分別することから苦も生まれる。それらを全て無として消していく。そうすることで、悟りの境地に近づける。これは、すごいお経である。

人間の築き上げてきたものを、お釈迦様は見事に「無分別」という言葉に従って全部消していく。でも、考えてみてください。これまで築いたものは墓場までは持っていけない。どんなに好きな人でも死ぬ時は一人。

だから、お釈迦様は、般若心経の最後になぐさめをおっしゃっている。

羯諦羯諦(ぎゃていぎゃてい)波羅羯諦(はらぎゃてい)波羅僧羯諦(はらそうぎゃてい)菩提薩婆訶(ぼじそわか)

この最後の段落は呪文と言われており、薬師寺では「行こう、行こう。さあ、行こう、みんなで行こう。Everybody Go!しあわせの世界へ」と解釈しているとのことです。全部消えてなくなるけど、一人じゃないよ、みんなで必ず行ける世界があるよと。

ここがなんとも仏教らしい考え方と松久保師はおっしゃいます。一人にはさせない、みんなで行こうと。お釈迦様の慈悲深さに心が震えます。

最後に

前回に続き、唯識の「五位百法」についてもお話いただきました。これは、人間の心の動きや現象を巧みに分類し、精神現象の多標性と複雑性とを、具体的な把握と分析により解明したものと言われています。たぶん、これをきちんと理解できたなら、人間の心の複雑さが可視化され、理解が深まるのだろうなと思いながらも、すでに頭がパンク状態で書ききれません(笑)

今回もものすごい情報量でした。生命の神秘やお釈迦様が般若心経に込めた慈悲深さまで触れることができ、感慨深い時間となりました。今ここに生きてる身体や、心の存在そのものが、奇跡に思えました。

最後に松久保師がおっしゃっていたように、落ち込んだり、悲しんだり、時に喜んだりする毎日の中で、自分を磨くということを怠らず、ちょっとずつ前へ、間違ったら修正しながら、少しでもさとりの境地に近づけるよう前に進んでいきたいなと思います。

今回も大変貴重なお話をお伺いできたことに感謝しています。
本レポートが、少しでも皆様のお役に立てたなら幸いです。

次回2月21日(水)は、いよいよ最終回となります。
質疑応答もありますので、直接お話をお伺いしたい方は、ぜひご参加ください。

奈良薬師寺・松久保師に直接教えを乞う「仏教」とは何か?
-今を生きるヒントが得られる仏教ゼミ 全5回-

 

※これまでの開催レポートはこちら



作成者:和の大学 事務局 伊藤律子

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