【開催レポート】第3回:奈良薬師寺・松久保師に直接教えを乞う「仏教」とは何か?

仏教ゼミ第3回 2017年12月20日(水)開催

全5回に渡る仏教ゼミも、折返しとなる第3回目を先日開催いたしました。ご参加者の皆様の学習意欲は、さらに拍車がかかっており、本編終了後の質疑応答も含めると3時間以上とこれまでで最長となりました。

質疑応答の最後に松久保師がおしゃっていたのですが、質問に答える会話からどんどん松久保師の引き出しが開かれ、次から次へとお話が出てくる様子を、これが「縁」と「因」なんですよと言い表していました。

なるほど。私たちの日常は、ほとんどがこの縁と因で織り成されていますね。
第3回目も、松久保師をはじめ、クミシュランとご参加者の皆様とのご縁から生まれたすばらしい回となりました。

お釈迦様が生きたインドという国の不思議

インドには、雨季と乾季があり、雨が降る時はとことん振り、振らない時は一滴も降らない。そして、食べ物も、甘いとなったら鬼のように甘く、辛いとなったら、コノヤローというくらい辛い!つまり、インドという国は真ん中がない。だから、お釈迦様は言った「中道(ちゅうどう)」真ん中が大事だと(笑) インドに行くと、お釈迦様がこれを大事にされたのが本当によくわかるなーという程、極端なことが多いそうです。

もう一つ、お釈迦様が説法する時に大事にされた「くり返し」。小さなお子様がいる方はよくわかると思いますが、子供は、何度言っても同じことをやってしまい叱られる。それと同様に、インドの人は、何度言ってもわかってくれない。何度も同じことをする。人の話を聞いてない(笑)

また、インドという国は、働かない人は働かないし、10時から開店する銀行が、10時20分にはティータイムが始まる。地下鉄を45年も作り続け、いまだに完成していない。

一方、数学には強く、日本の九九は1桁までですが、インドは2桁の掛け算、例えば95×23をすぐ答えられるレベルです。シリコンバレーや日本で活躍する高い能力も持った優秀な人も数多く存在している。

もっとこうすれば効率的なのに、もっと努力すればいいのに、高い能力があるのにと、日本では考えられない常識に、苛立つことが多い。
そんなインドという国に生まれたお釈迦様は、何とかこの人たちを変えていこう、幸せにしようという想いを持ちながら生きておられたのではないか。

インドは、愛すべき国ではあるが、どうしても好きになれない部分もあると松久保師は語ります。

持っている人間のおごり、持っていない人間のひがみ

松久保師がインドへ修行に出る際に、とある人にインドで暮らす3か条を教えていただいたそうです。それは、「きくな」「だまされるな」「まけるな」の3つ。

インドで暮らす中、あるレストランの前で、毎日のように物乞いする少女に出会ったそうです。教えてもらった3か条を元に、負けてはならないと、毎日、その少女と言い合いをしていたそうです。

松久保師がインドを去るその日も、その少女が現れたそうです。帰り支度をしている姿を見て、その少女も、この人はどこかへ行ってしまうということは悟っていた様子だったとのこと。そして、松久保師の目をじーっと見て言った言葉は、いつもの「お金ちょーだい」。

最後、何もいい返せない自分がいた。帰りの電車の中でモヤモヤしながら、ぱっと頭に浮かんだのが「持っている人間のおごり、持ってない人間のひがみ」という言葉だった。この2つのせめぎ合い、葛藤の中に自分はいたんだなあと。

2年間インドの地で暮らし、ああだこうだと様々な葛藤や体験をし、色々思うことがあったけれど、その場所で生まれ、その場所で生きない限り、そして、その場所で死なない限り、口にしてはいけない言葉を言っていたのではないかと。

そこに生まれ、生きている人にしかない価値観、簡単に変えようのない価値観を持っている人たちに対し、その場所で生きて死なない人間は、何も言ってはいけないんだなーと。

逆に言うと、その場所に生きて、その場所で過ごし、その場所で骨を埋めるなら、その場所で果たし続けなければならない役目が、絶対あり続けると。果たすべき責務があるんだと教えてもらったとのことです。

「因果」と「輪廻」

よく私たちは、善いことをしたら善い結果「善因善果」、悪いことをしたら悪い結果「悪因悪果」と考えます。いわゆる「因果」です。それを、もう少しふくらませていくと「輪廻」という考え方になります。ただ、お釈迦様は、「善因楽果」「悪因苦果」とおっしゃり、善いことをすれば「楽」が訪れ、悪いことをすれば、必ずそれは「苦」となる。この話を、道徳ではなく、宗教の観点でご説明します。

例えば、優先座席。お年寄りが目の前に来たら、どうぞと席を譲る。そうすると譲られたお年寄りは、「ありがとう」と言う。それに対し、みなさんは、「どういたしまして」と言うでしょう。譲ってあげたのだから、「ありがとう」だし、それにお返しする言葉は、「どういたしまして」。しかし、これは道徳の世界での返し言葉である。

宗教学で返すとするなら、「代わらせていただいて、ありがとうございました」という考え方になる。「あなたが、私の目の前に立っていただいたから、私がこの場で譲らせていただく機会をいただきました。その結果、私は清々しい気持ちになりました。ありがとうございました。」という気持ちで立ち去るのが仏教なのです。

みなさんは、心からそういう気持ちになれますか?
中には、もし、ありがとうって言ってこなかったら、「譲ってあげたのに」と思う方もおられるでしょう。ここの発想の違いが、お釈迦様と道徳の違いです。これを、「善因楽果」「悪因苦果」としてお釈迦様は表したのです。お年寄りには席を譲りましょうと、単に頭で理解してやるのではなく、気持ちで、心で、そして、態度で、行動で、しっかりと自分の中に息づかせて行いをすること。お釈迦様は四諦の教えでそれらを示しており、それが因果であり輪廻であると説いています。

インドには、「常緑樹」という、年中葉が落ちない木があります。特徴的なのは、枝が伸びて地面にくっついている。こういう木は、植物学者に言わせると、根っこから枝先へ栄養が行き、枝先からまた地面の根っこへと伝わり、循環している。お釈迦様が言った「輪廻」とは、こういうことを言ったのではないかと。永遠なる命は、循環するところに生まれる。

最後に

今回も、「唯識」「八正道」についてもくり返しお話いただきました。特に八正道については、前回いわんとしていることは理解できたものの、「正しい」って言われても難しいなあという疑問が私の中にありました。終了後、松久保師が、正しさは人の数だけある、だから、私は八正道を説明するのがあまり得意ではないとおっしゃっていました。「正しい」は、言葉にすると簡単ですが、考え出すとキリがないですね。

また、法相宗において、一切の事象を分類した「五位百法」についての説明にも突入しました。時間切れで途中ではありましが、人の意識や心というものが詳細に分類されており、これだけ私たちの「心」は、複雑であり常に揺れ動いているものなのだなあと感じました。

有り難いことに、貴重なお話を今回も含めて、これまで3回聞く機会をいただきました。ようやく仏教の何かが見えてきたような気がする、というレベルです(笑)よく人は48時間で聞いたことの80%を忘れると言われます。確かに、どんどん忘れていきます。一方で、仏教でいう末那識、阿頼耶識といった深いレベルには、確実に何かが刻まれているような気もしています。

残りあと2開催となりましたが、次回はどんなお話が聞けるのかとても楽しみです。
松久保師を始め、クミシュラン、ご参加者のみなさまと一緒に学べるご縁に心から感謝いたします。

次回、仏教ゼミ第4回の開催は、2018年1月17日(水)となります。

奈良薬師寺・松久保師に直接教えを乞う「仏教」とは何か?
-今を生きるヒントが得られる仏教ゼミ 全5回-

※第1回目、第2回目の開催レポートはこちら


作成者:和の大学 事務局 伊藤律子

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