ビジネスパーソンにも役立つ「禅の教え」②職場編

前回のコラムでは、「ビジネスZEN入門」という妙心寺退蔵院副住職の松山大耕さんが書いた本を参考に、現代に「禅」が求められる理由や、禅の教えについてご紹介しました。

今回は、職場でよくある悩みや課題にフォーカスし、禅の教えをもとに紐解いていきたいと思います。

ポジティブな職場を生み出すには?

昨今、「ダイバーシティ」や「働き方改革」といった言葉を多く耳にします。元々、職場という所には、年齢や立場、雇用形態も異なり、価値観や考え方も様々な人が集まっています。多くの管理職が、このように多様な価値観を持った人をまとめ上げ、同じ方向に向かっていくことの難しさに悩んでいると言えるでしょう。

ポジティブな職場とは、皆が皆、自分はこの職場に必要とされ、自分の仕事が人や社会の役に立っていると思え、自然とやる気になれるような職場です。管理職は、このような職場環境を作っていくことが求められます。

著書の中では、職場でポジティブな空気を生み出すことの一つに、「上司が部下を褒めること」を上げています。人は褒められるとうれしくなり、もっと勉強したい、もっと役に立ちたいといった意欲や向上心が沸いてきます。
しかし、日本の職場は、案外この「褒める」ことができない職場が多いように感じます。株式会社シェイクにて、組織風土を診断する成長支援組織診断があるのですが、その結果を見ても、日常のかかわりの中で、評価している能力を伝えることや事実に基づいて褒めるといった項目が低い職場がとても多いです。
※参考:「成長する職場」と「成長しない職場」の違いとは?(株)シェイク 調査レポート

また、管理職だけでなく、働く人も仕事の向き合い方や、取り組む姿勢を少し見直すことも重要です。

禅には次のような言葉があります。
「随所に主となる」
どういう立場であっても、自分がやっている仕事に主体性を持って取り組むということです。この仕事がどういう意味を持っているのか。社会とどうつながっているのか。それをしっかりと認識できれば気持ちはきっとよい方向に向かいます。

今、自分の目の前にある仕事は、どんな仕事であっても主体性を持って、一生懸命取り組むことで、職場の中で必要とされ、人の役に立つことができるのではないでしょうか。また、上司や部下、同僚に支えていただいていることに、日々感謝の気持ちを忘れない、みながそういう意識を持つことができれば、きっとポジティブな職場が生まれるのではないでしょうか。

自分より能力が低いと感じる者が自分より高く評価されている

ビジネスパーソンにとって、「評価」はつきものです。よって評価にまつわる不満や悩みは、多いものです。常に周りの目を気にし、他人と比較して自分の評価を気にしていては、心休まることはないでしょう。

「自分より能力が低いのに、なんで彼は自分より評価が高いのだろうか」
この言葉を聞いてまず思うのは、本当にそうなのか、ということです。自分自身については、案外よくわからないものだからです。謙虚な気持ちをもって、まずはそのように考えてみることが肝要です。

人には様々な一面があります。自分から見えている景色と、上司や部下から見えている景色は必ずしも同じとは限りません。どんな人にも長所があれば、短所もあるものです。一度、謙虚な見方で捉えなおすことも必要です。

一方、実際に「自分より能力が低いと感じる者が自分より高く評価されている」ということもあるでしょう。そのような時は、

「たかが自分」大切なのは、そう思えるかどうかです。
たかが自分でしょう、という気持ちがあれば、他人と比べることもなくなっていきます。

自分自身への過度な期待を手放すということです。そして、会社からの自分への期待が低いのならば、それを逆手に取り、プレッシャーを感じることなく、目の前の仕事に一生懸命取り組むことができます。その結果、思いのほか高く評価してもらえることもあるでしょう。

また、人間関係においては、「不二」の考えが大切だと言います。

仏教には、「不二(ふじ)」という言葉があります。これはつまり、物事は、善か悪か、イエスかノーか、といった二元的な捉え方をしてはいけないということです。何事も二つの立場にわけることなどできず、その間に無限の異なる立場があるということ。自分と他人を切り離さず、できる限り他人のことも自分のことのように考えることです。

頭ではわかっていても、なかなか「不二」の境地に辿り着くのは、難しいことです。しかし、著者の松山大耕氏は修行を重ねてきた結果、今では学生時代とは気持ちのあり方がまったく違うと言います。

人は誰でも自分のことをよく見せたいと思う生き物であり、それが故に、他人を羨んだり、妬んだりもしてしまいがちです。その気持ちがあるから、かんばれるという場合もあるので、そのこと自体が悪いという訳ではありません。しかし、羨ましさや妬ましい気持ちが過ぎて、自分が不幸になるのであれば、「不二」の考え方を活かすことが得策かもしれません。

まとめ

職場の人間関係は、多くの人が悩んでいます。「悩む」ということの裏側には、良くしたいという願いが隠れているものです。

日々の働く姿勢や心構えを、周りの人は必ず見ているものです。部下がいる人は、仕事に向き合う姿勢や良い面を見つけて、褒めることを積極的に行ってみてはいかがでしょうか。

“仏教とは「ゲイン」ではなく「ルーズ」である”
何かを得ようとするのではなく、むしろ、余計なものを削ぎ落としていく。そうすることで、本当に大切なことや、物事の本質が見えてくるということです。

みなさんにとって、本当に大切なこととは何でしょうか?
それは、すでに目の前にあるかもしれません。

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