“武士道”から学ぶマネジメント ~②勇~

武士道とは

旧5千円札でも有名な新渡戸稲造が1899年にアメリカで英文にて発表した「武士道」(原題『Bushido ―The Soul Of Japan』)
新渡戸稲造が、学者や外国人である妻から「日本では宗教を教育していないのにどうして道徳教育を授けることが出来るのか」というような様々な問いを受けて、「日本人とはなにか」を問い直し、纏めた本です。

「武士道」という本、ビジネスにおいてマネジメントポジションにつくリーダーが読むべき本としても挙げられます。その理由は、変わらない「普遍性」にあり、「武士道」では、「武士」が重視した伝統的な価値観や行動規範が述べられていますが、これは、「日本」の「武士階級」の中だけで通用するものではなく、武士の高潔で気高い生きざまは、時代や国境を超えて、すべての人間の心を打つものだと言われています。

“勇”という漢字から何を想像する?

武士道では、重要な精神性として7つの徳(義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義)が挙げられており、その中の「勇」についてみていきたいと思います。

勇という漢字。どんな印象を持ちますか。
「デジタル大辞泉」を見ると、

気力が盛んに奮い立つ。いさみ立つ。いさましい。
「勇敢・勇気・勇士・勇壮・勇猛・勇躍/義勇・豪勇・大勇・忠勇・沈勇・蛮勇・武勇」
思いきりがよい。

と記載されています。力強さを感じる単語が並びますね。

「義をみてせざるは勇なきなり」

では、「武士道」の中では、どのような思想として表現されているのでしょうか。
その一つに、孔子は『論語』で述べていた「義をみてせざるは勇なきなり」、これをもとに説明されることも多いです。
「人として為すべきことと知りながら、それを実行しないのは勇気がないから」というような意味であり、前コラムであった「義」があったとしてもそれをもとに行動しなければ駄目であるということでしょう。

勇とは勇気であり、正義を敢然と貫く実行力である、と言う人もいます。
例えば、日常生活において、「モラルに反する」「不正かも」と思っていても、言えないということはないでしょうか。「皆がやっている」と自己正当化していないでしょうか。自分の義にしたがって行動することが求められます。

一方で、勇気といっても、向こう見ずではなく、大事なところで行動することが謳われています。どんなときも炎の渦中に飛び込んでいくことでは決してなく、武士の間では、向こう見ずな挑戦や後先考えない行動は勇ではなく、むしろ「匹夫の勇(ひっぷのゆう)」として軽蔑されていたそうです。ただ大胆に行動するのではなく、「義」に裏打ちされた行動ということでしょう。

危機に遭っても動じない精神

また、「勇」という言葉は、大胆な行動や力強さを感じる印象がありますが、「武士道」では、勇は「立ち向かっていく強さ」と共に、「どんな場面でも動じない平常心」があると言われています。勇気のある武士は、常に穏やかで動じない。それは、穏やかな平静さであり、平静さとは、静止の状態における勇気ともいえるのでしょう。

ビジネスにおいてや、日常においても、状況が急転したり、大きな天災等どうしようもできないことが起こることがあります。それに対して、向こう見ずな行動ではなく、静さを保ち、「義」に即した大事な行動をする。そういった人がそばにいると、急転状況でも一歩ずつ前に進めていけるものです。また、これは、ストレスある環境のなかで、メンタル強化の必要性が叫ばれているビジネスパーソンにとっても示唆的な内容ともいえるでしょう。

「勇」職場で発揮できていますか?

職場や日常において、一歩踏み出せないことありませんか?
・ちょっと不正だなと思いながら、見ないふりをしたり
・誰かがパワハラ的アプローチをしているのを見ながら、そういうこともあるかと思ったり
自らの正義を貫く行動をしているか、改めて振り返ってみましょう。

また、いかなる時でも平然としているでしょうか?
最近、動揺して、それが周りに伝わったことはないでしょうか?

先ほどの「勇」があると言うことは、ぶれのない一貫性をもとに、すべてに焦っているのではなく、平常心を保って人に接しているような状態であり、そんなビジネスパーソンでありたいなとも思います。

皆さんはいかがでしょうか。

「勇」を高めるために

「勇気とは恐れるべきこととそうでないことがわかることだ」と哲学者プラトンのプラトンは言っています。
全てに対して、大胆になったり、恐れることは、「勇」の精神とは異なるもの。

では、職場や日常を見てみると、大胆になったり、恐れたりするポイントがハッキリしているでしょうか。また、その前提において、自分が何よりも大事にしたいマネジメントポリシーが明確でしょうか。例えば、
・部下が前向きに働くことを守ることだけは徹底したい
・人に対して「公平に接する」ということだけは守りたい
・私利私欲で組織を変に動かそうとする人は許せず、組織のベストを追求したい
など。
ここだけはというものを持っているからこそ、そのタイミングで行動ができるし、それ以外に関しては平然と構えることができやすくなるもの。

マネジメントをする上での自分なりの「義」の明確化が、効果的な「勇」につながるのだと思います。

また、新渡戸稲造氏の言葉の中にあるのは、
武士の教育にあたって第一に必要とされたのは、その品性を高めることであった。そして、明らかにそれと分かる思慮、知性、雄弁などは第二義的なものとされた。

日々「勇」であり続ける、と誓ってもなかなか具体的な行動に繋がらないもの。この新渡戸氏の言葉から、日々「品性」を高めることが、結果的に「勇」を高めることにもつながると示唆されていると感じます。

どのような管理職でありたいか。どのようなビジネスパーソンでありたいか。
そして、そのイメージは「品性」があるのでしょうか。

それを明確にし、品性を高める鍛錬を日々行う。その結果が、「勇」が高まった状態になるのでしょう。
日々の積み重ね。それが「勇」を高め、人間力を高める上で大事なことだと思います。

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