遊びながら徳を積み、美意識を磨く 〜究極の和文化体験ゲーム「枯山水」〜

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ボードゲームといえば、みなさんは何を思い浮かべますか?
子どもの頃にやったシンプルな「すごろく」や、「人生ゲーム」「モノポリー」がひと昔前の定番でした。スマホのアプリやネットでのオンラインゲームが全盛期の今、「ボードゲーム」と聞くと懐かしさを感じるかもしれませんね。

そんなご時世にもかかわらず、発売後に人気が出すぎて品薄になっていたというボードゲームがあるのです。しかも、そのゲームのテーマが「プレイヤーが作庭家となって、徳を積んだり、人様へ親切を施したりしつつ、最高に美しい日本庭園を完成させる」という内容だというではないですか。

この驚きの新感覚の和文化ボードゲーム、「枯山水」について書いてみたいと思います。

枯山水ってそもそも何?

今回ご説明するボードゲーム、「枯山水」。ゲームのメインタイトルでもありますが、そもそもは砂(一般的には白砂)と石をメインに、水を一切使わず山水の景色を表現する日本特有の庭園様式のことを言います。

有名どころでは、龍安寺の方丈石庭や銀閣寺の向月台があげられ、旧くから室町時代の頃より発展を遂げてきました。けっして華やかさはないものの、ミニマリズムを極めた研ぎ澄まされた美しさを表す空間は、瞑想や座禅の場として今でも活用されています。

砂の模様や石の配置なども非常に繊細に表現されているものなので、その庭園は散策のためのものではありません。室内からその景観を眺め、心を落ち着かせ、そのわびさびの極められた空間へと思いを馳せる。慌ただしい日常から非日常へといざなうための、空間を用いた仕掛けが、文化となったものといえるでしょう。

「枯山水」の遊び方

遊び方やルールはいたってシンプル。前述したように、「プレイヤーが作庭師となって、徳を積んだり、人様へ親切を施したりしつつ、最高に美しい日本庭園を完成させる」という内容。つまり、他のプレイヤーよりも先に、美しい日本庭園を完成させたらゴールです。

「作庭家」となるプレイヤーには「作庭家カード」が配られ、さらに完成を目指す庭園についても各プレイヤーに「名庭園カード」が配られます。さらに、整然とした砂目模様のついた「タイル」も配られ、順番に配置していくことで、自分の目指すべき名庭園をじっくりと作り上げていくのです。

やってみました!「枯山水」

とはいえ、説明だけ読んだところでコンセプトが斬新すぎて想像もつかないという方がほとんどだと思います。もちろん私もその一人でした。そこで、和の大学では“「枯山水」で遊ぼう”という企画で、実際に体験してみたのです。

最初に各自に「寺院ボード」が1枚ずつ配られ、そこに「タイル」を配置していきます。「作庭家カード」は全部で9枚。つまり、9人の作庭家がこのゲームには存在しています。例えば「雪舟」や「千利休」などよく知っている名前もあれば、「この方は一体?」というような渋い方もいらっしゃり、自分がどの作庭家になるのかも、楽しめるポイントの一つです。

そして次に配られる「名庭園カード」も見応えがあります。「龍安寺」「瑞峯院」「東福寺」「龍源院」などなど。たとえ足を運んだことがない場所でも、美しい絵柄を見て、実際にその特徴をゲームで再現していくと、「いつか行ってみよう」という気持ちになるから不思議です。

気になる得点要素も実にユニーク。砂の模様が綺麗に断絶することなく繋がっていたらポイント。砂だけではなく、苔が描かれていて、その苔もしかるべき配置で活かされていたらポイント。付属品であるかなりリアルに作られたミニチュアの置き石にもランクがあり、必要な石をゲットし、うまく配置できればポイント、というように、庭園の完成度が数値化されて競えるようになっています。

そして実際の体験での盛り上がりポイントは、景観を美しく整えつつ、必要なアイテムをゲットするために「徳ポイントを貯める」という点でしょうか。自分のターンになった時、単純に駒を進めることもできますが、後々必要となる石をゲットするために「徳を積む」というアクションが選べます。

徳を積むために、もっとも手っ取りばやい方法が「座禅」。自分の番が来るとみんなが「じゃあ、座禅します!」とおもむろに目を瞑って座禅のポーズになる・・・というめずらしい光景が繰り広げられていました。

そんな穏やかな進行とはいえ、ゲームはゲーム。「勝つためにはあの砂模様のタイルがどうしても欲しい・・・」と、自分の庭園の完成度を高めるための欲にかられるプレイヤーだって出てきます。そこでできる手段は、なんと「強奪」!欲しいものを横取りできてしまうルールです。そして悲しいかな、作庭家でもあり、禅僧でもある我々は強奪を拒否することはできないのです。そんな非情な手段ですが、使うリスクもあるんです。それは「徳ポイントがマイナスになる」こと。

徳を高めるか、最高の庭園を生み出すか。そんなプレイヤーの葛藤も盛り上がりポイントでした。

まとめ

いかがでしたでしょうか?在庫切れまで発生するようなブームを生み出した「枯山水」。さまざまな日本庭園の様式美や、歴代の禅僧たちを肌で感じることができ、かつ勝敗を決した後でも雰囲気が悪くならないのは、みんなが自分なりに「美しい庭園を作ろう」と取り組んだ結果が、小さな箱庭として形になっているという喜びがあるからかもしれません。

事実、勝ち負けよりも盛り上がったのは「だれだれの庭園、すごいね!」「この石とこの苔の対象がきれいじゃない?」など、お互いの作品を称え合い、みんなが念入りにスマホで写真を撮るという和やかな時間でした。

自分の目標をしっかり目指しつつ、助け合える部分は助け合う。そのプロセスで徳を積んでいき、質の高い美しいゴールをみんなで称え合う。まさに、私たちが普段なにげなく大切にしている「日本人としての調和の感覚」が体現された究極の和文化体験ゲームといえるのではないでしょうか。

みなさんもぜひ、一度体験してみてくださいね!

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