【和をたしなむ、和を遊ぶ 2】茶道は敷居が高くていい。その文化の敷居を超える手伝いをする

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IT業界のトップランナーとして多忙な日々を送りながら、茶人としての顔も持つ近藤俊太郎さん。
和の世界に身を置き、茶道について趣味以上の発信力を備えるそのいちばんの理由は、「単純にお茶が好きだから」。
けれど、茶道の「和文化」に魅せられている、というのも理由のひとつ。
2回目のインタビューでは、和の大学株式会社 代表取締役社長の上林周平が、近藤さんにさらに和文化について詳しく聞いていく。

日本文化を身につけるということは…

(上林)近藤さんはアメリカで暮らした経験を持っていますが、海外で暮らしたことと、和の芸術である茶道に嗜むこととは、何か相関性はありますか。

(近藤) どうでしょうね。小学校に上がる前にアメリカにいたということが、どれほど茶道に結び付いているかと考えてみると、それが原点ではないでしょうね。
茶道を始めた動機は「お茶が好きだった」が一番強い。でも、海外に滞在して感じていたことと、茶道を始めたこととは、やはりどこかでつながっていると感じています。

ヨーロッパ人にしてもアメリカ人にしても、自国の文化について話題にすることは多いですよね。それはずっと感じていたことです。社会人になってからも、外国の方と仕事をすることが多かったのですが、彼らと接していると、すごく自国愛があると感じます。

インド人であれば、ヒンドゥー教に自らのアイデンティティを置いているのがわかる。そのスタンスで「日本にはどんな文化があるのか」と聞かれると、僕には答えられない。当時は入社したてで、まだお茶の世界を知らない頃だったので、本当に何も言えなかったのです。

「なぜそんなに日本のことを知らないんだ」と、彼らは聞いてくる。

でも、わからないものはしかたがない。当時は「そこまで日本に興味はないよ」と、割り切っていました。

でも、きっとどこかでひっかかっていたのでしょうね。茶道を始めて、「ああ、これで答えられる」と思いました。
実際、胸を張って日本文化に心酔しているのだと言えたわけですし、周囲の外国人からも「お前は日本のことがよくわかっているな、お茶もやっているし」と認められた。
それは、ラクになったことでもありました。

近藤さんが「アバンギャルド茶会」という茶会を始めたのも、海外に滞在したことがきっかけなのですよね。

はい。たまたま外務省が、「日本の文化を伝えるような芸術活動をしている人を中国に10日間派遣し、現地で文化交流する」というプログラムを計画していまして。
40歳以下の30人ということで、芸大の先生や池坊の先生、タレントさんやサブカルの有名人までさまざまな方に声をかけたようなのです。
なぜかありがたくも僕にも「参加しない?」というお話をいただきまして、参加させていただきました。

現地では当然ながら中華料理ばかり食べていまして、みなさん「胃がもたれる」という話になり、「ならば、僕の部屋で抹茶でも飲みませんか」と持ち掛けたのです。

すると、みなさんとても喜んで。「ずっとお茶には興味があったんだよね、でも気が引けて」「敷居が高くて」などと言うのです。日本が誇る芸術家でさえこうなのだから、普通の人はもっと敷居が高いと思っているのだな、と感じました。

「じゃあ、帰国したら僕のところでお茶ごっこしますか?」と誘ったのです。芸大で金工とか木工とかやっているすごい方々ばかりなので、「みなさんのアート作品を使って茶会ができたらいいですね」と言ったら、意気投合して5人くらい集まってくれて。その方たちがまた友達を読んで、10人ぐらいで始めたのが、アバンギャルド茶会なのです。
そんないきさつなので、できるだけ堅苦しくないものにしたいと思って始めました。

高い敷居をまたぐことができれば自信がつき楽しめる

お茶のお稽古というと、何十回も通い、高いお道具をそろえて……という印象ですが、近藤さんは、初心者向けに1回ごとに3000円の講座を開くなど、非常に入りやすい講座を開催しています。

そもそも茶道は作法が難しい、緊張する、知らないのが恥ずかしい、知らないとは言いにくい、というマイナス要因があります。
そのマイナスを戻すところから入ってもらわなくてはならない。

だから、僕の茶会では、「たてたお茶を美味しいと思ってくれればそれでいい」と言っています。どんな人でも、「おいしい」という味覚を持てたときには、緊張がほぐれていますそれで僕が伝えたかったことは伝わっただろうし、茶道は嫌いにならないと思うんですよ。

楽しい、おいしいと思ってもらえれば、初めての人はもうオッケーで、続けるか続けないかはそのあとの話ですからね。

ただ、茶道の「敷居を下げる」というふうには思っていません。最初は自分もそう人に言っていたのですが、「近藤くん、それは違うよ」と言われました。「なぜ敷居を下げないといけないの? 文化は敷居を下げるべきではないでは?」と。

なるほど、敷居は高くてよい、と。

はい。敷居は高いままでいい。「またぎたい人をあなたが押し上げてあげればいいんじゃない?」と言われて、納得しました。
以来、僕は「敷居を下げる」という言い方をしなくなりました。

文化・芸術・芸能は敷居が高いほうがいい。僕はその敷居の高さを乗り越えるお手伝いをするのだ、と。新しくお茶をやる人が敷居を超えられれば自信になるじゃないですか。そのほうが、敷居が低いよりも達成感もあると思うし、そのほうが僕としても「新し感」も作れるのではないかと思っています。

次回は茶道文化とビジネスの関係について、さらに詳しく伺います。

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